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Lee-Byung-hun addicted

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至福の時

☆至福の時☆



「全く…」
DVDを見始めてから5分も経たないうちに俺の隣で揺は、すやすやと寝息をたて始めた。
韓国に帰る日が決まるとすぐ、俺は揺に電話をかけた。
「11日にソウルに帰るよ…」
カンヌから帰って仕事に追われているであろう揺に、来てくれとは言えなくて。
俺はその先、言葉を詰まらせた。
そんな俺の気持ちを察したのだろうか。
「そう。良かった。じゃソウルで待ってる。
やっと会えるね」
電話口の揺は明るくそう言った。
「仕事大丈夫なのか?」
「大丈夫。任しておいて」
自信満々に答えた揺。

一体どんな無理をしたのか…。
にっこりと笑って俺をソウルの家で出迎えた彼女は、目の下に隅を作って真っ赤な目をしていた。

結局。
いつも無理をして予定をやりくりするのは揺で。
俺はわがままばかり言っている。

今、こうして俺の肩に頭を預けてぐっすりと眠っている揺。
彼女はそれでも、とても幸せだと俺に向かっていつも微笑む。
彼女は本当にこれで幸せなんだろうか…。
俺は眠る揺の肩にブランケットをそっと掛け、
とりあえず画面に映し出される物語に意識を向けることにした。

「あれ?…終わってる…私…寝てた?」
一本目の映画を見終わってディスクを取り出していた俺の背中に向かって、揺はそう話しかけた。

「寝てた?じゃないよ。
本編始まって5分でグーグーいびきかいてたぜ。
全く…何日寝てないんだよそんな顔して」
新しいDVDを入れたTVには映画予告が流れ出している。
俺は揺の隣に戻ると彼女の両目の下を親指でそっとなぞった。
「嫌だ…メイクでカバーしてきたつもりだったのに」
揺は困った顔をした。
「目だって真っ赤だ…
一体何日寝てないの?」
俺は指で揺の下瞼をあかんべするように引っ張った。
「…3日くらい大したことないわよ。
年中よ、そんなの。
別にここに来るためってわけじゃなく、
たまたま急ぎの仕事だっただけだから」

「揺…体調だって戻ったばっかりなんだから、
あんまり無理するなよ。」
たまたま急ぎの仕事だと言った揺の黒目はキョロキョロと動いていて、
ひと目で嘘だとわかったが、
無理をしてまで来てくれた揺の気持ちが心地良かった俺は、
それ以上追求することをやめた。
そんな彼女が無性に愛おしくて
両頬を手で包んだまま壊れものを扱うようにそっとキスをした。
「無理をしなかったら…あなたには会えない。
無理しようとしなかったらあなたと一緒に人生歩もうなんて思わなかっただろうし。
たとえ無理そうでもやってみたら何とかなることを、
あなたが教えてくれたんじゃない」
揺はそういうとケラケラと笑った。

「揺…」

「限界に挑戦する人生も悪くないよね。お互い」

そう悪戯っぽく言った揺を俺はただ黙って抱きしめた。
揺の首筋に顔をうずめ、彼女の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「やっぱりここでこうしてるのが一番いい」
俺はつぶやいた。
それが素直な気持ちだった。
慣れ親しんだ我が家で
大好きなDVDを見ながら
無理をして俺だけのために来てくれた大好きな女の形のいい尻を撫でる。
これ以上の至福のときがあるだろうか。

「限界に挑戦しちゃう?」
仮眠を取って元気になったのか、
揺は俺の体を受けとめながら、
嬉しそうにそう言って微笑んだ。


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